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〈第1回〉
登記はなぜ必要か【基礎知識】
1 はじめに
土地や建物を売買したときには、新しい所有者は登記簿に自分の所有権を登記しておかないと、その所有権を第三者に主張することができません。新しく会社を設立したときや会社の役員が交代したときには、登記することが義務づけられています。
このように、我々の日常生活には「登記」をしなければ、不利益を受けたり、登記することが義務とされることがあります。この登記は一定の形式の帳簿に記載されるという形で行われますが、この一定形式の帳簿が登記簿です。登記簿には様々な種類がありますが、本稿は、日常生活の上で比較的関係の深い不動産登記簿と商業登記簿をとりあげ、その中でも不動産登記簿を中心としてその見方、記載されている事項の意義、留意すべき点等について考えていきたいと思います。
2 登記制度
そもそも、登記制度がなぜ必要とされるのでしょうか。
[1]不動産登記法第3条では不動産につき登記できる権利を9種類に限定しています(所有権、地上権、永小作権、地役権、先取特権、質権、抵当権、賃借権、採石権)。賃借権以外の権利は「物権」と総称される権利です。物権というのは債権に対する概念で、一定の物を直接に支配して利益を受ける排他的な権利です。「排他的な権利」というのは、同一物の上に1個の物権が存在するときは、これと両立しえない同一内容、性質の物権の並存することを許さないということです。たとえば、ある土地につき甲が単独の所有権者だとすれば、その土地について同時に乙が所有権者になることはできないことになります(特殊なケースとして共有がありますが、持分は一個の所有権の内部的な制限あるいは分量
的部分であって、複数の所有権があるわけではありません)。
しかも、民法ではこの物権の変動(設定、保存、移転、処分の制限または消滅)は、当事者の意思の合致によって成立する(民法176条)とされていますから、その変動を外部から認識できるようにしなければ、権利関係を複雑にし、第三者に思わぬ
損害を与える結果となります。そこで、不動産に関する物権の変動については登記を公示方法とし、この公示の手続を踏まない限り、たとえ実際に所有権や抵当権などを取得したといっても、これを第三者に主張できないこととしているのです(民法第177条)。すなわち、登記簿を閲覧することによって、不動産の取引を安心して行うことができるようにするための制度が、不動産登記制度です。
[2]会社などの商人は、一般
個人と、あるいは商人同士で広範にかつ頻繁に様々な取引を行っています。ところが、会社として取引していながら、そのような会社が実際には設立されていなかったり、代表取締役と称して取引した者が真実はそうでなかったりした場合、取引の相手方は不測の損害を受けるおそれがあります。しかし、会社として本当に法人格を取得しているのか、誰が代表取締役や支配人なのか、取引の度に実態調査をしなければならないとしたら、とうてい迅速な取引はできません。そこで、商業登記簿という帳簿に会社や個人、商人に関する一定の事項を記載し公示し、取引の安全と円滑化を図る制度が商業登記制度です。
不動産登記が、不動産という権利の対象の物理的状態と権利変動の内容を公示するのに対し、商業登記は、商人(会社及び個人・商人)という権利、義務の主体に関する事項を一般
に公示する制度です。
3 登記簿等の種類
[1]不動産に関する登記簿には、土地登記簿と建物登記簿とがあります。この他、登記簿に編綴されているのではないが、登記簿の一部とみなされているものとして、共同担保目録、信託原簿があります。登記簿以外に登記調査によく利用さものとして、不動産登記法14条地図、地積測量
図、地役権図面、建物図面、各階平面図、公図(法14条に基づかない地図)などの各種附属書類があります。
これらは、すべて閲覧できますが、謄本または抄本が請求できるのは登記簿(共同担保目録、信託原簿、工場抵当法3条による機械器具目録、財団目録等を含む)についてです。現在、登記事務のコンピュータ化が進められており、そのための法律改正が昭和63年6月に行われ同年7月1日から施行されました。
現在は、多くの登記所においてコンピュータ・システムにより事務処理がなされています。
[2]商業登記簿には、9種類の登記簿があります(商号登記簿、未成年者登記簿、後見人登記簿、支配人登記簿、その他会社に関する5種類の登記簿。商業登記法6条)。その中でも数のうえで最も多いのは株式会社の登記簿です。商業登記事務についても登記のコンピュータ化が進められており、大都市を中心とした繁忙な登記所ではコンピュータ・システムにより事務処理がなされています。
4 登記簿等の構成
[1]不動産登記簿では、1筆の土地または1個の建物について1用紙が備えられます。ただし、区分所有権の客体である建物についてはその一棟の建物に属するものの全部につき1用紙を備えるとされています。登記簿の様式は、1用紙を表題部・甲区・乙区に分け、表題部には、土地または建物の表示に関する事項(所在・地番・地目・地積・家屋番号・種類・構造・床面
積等の同一性を示す事項)が記載されます。甲区欄には、表題部に示された不動産の所有権に関する事項が、乙区欄には、その不動産の所有権以外の権利に関する事項が記載されます。したがって、現在の所有者は誰か、以前の所有者は誰であったか、所有権取得の原因は何であったか、所有権の差押や処分禁止の仮処分などはないか等を調べるときは甲区欄を見ることになります。
また、抵当権や質権等の担保権、あるいは、地上権や賃借権、地役権等の用役権の存否やその内容を調べるときは乙区欄を見ることになります。甲区欄、乙区欄のそれぞれは、順位
番号欄及び事項欄に区分されています。登記が申請されると、その具体的内容は受付番号順に従って事項欄に記載され、それぞれの記載には甲区、乙区毎に順位
番号が記載されます。同一の不動産に登記のなされた権利の優先順位
はこの順位番号によって決定されます。ただし、甲区に記載された権利と乙区に記載された権利との優先関係は受付番号(正確には受付年月日及び受付番号)によって決定されます(不動産登記法第6条)。
登記事務をコンピュータ・システムによって取り扱う場合には、不動産登記簿は、磁気ディスク(これに準ずる方法により一定の事項を確実に記録し得る物を含む。)をもって調整されます。すなわち、ブックレス・システムにあっても登記の記録媒体が登記簿です。
磁気ディスクをもって調整される登記簿にも、観念的には土地登記簿と建物登記簿があります。しかし、いずれも同じ磁気ディスク装置の中に登記事項が記録されますので、ブックシステムでの1登記用紙にあたるものは「1登記記録」と読み替えられ、観念的には、1登記記録も表題部、甲区及び乙区からなります。
[2]株式会社の登記簿には、商号・資本欄、目的欄、役員欄が設けられ、必要に応じて、予備欄、支店欄、転換社債欄、新株引受権付社債欄が設けられます。商号・資本欄には、会社の名前(商号)、本店所在地、公告方法、額面
株式1株の金額、発行可能株式の数、現在発行済の株式の数、資本の額、会社成立の日等が記載されます。目的欄には、会社の営業種目が記載され、何を行うために設立された会社なのかが示されます。役員欄には、現在の取締役、監査役、代表取締役が誰であるのかが記載されます。磁気ディスクをもって調整される株式会社登記簿には、商号区、目的区、株式、資本区、役員区、会社支配区、支店区、転換社債区、新株引受権付社債区、会社履歴区、企業担保権区、会社状態区、登記記録区に区分した登記記録をもって編成されますが、商号区、目的区、会社・資本区、役員区以外の区分した登記記録はひつように応じて設けられます。
5 コンピュータ・システムによる登記情報の公開
磁気ディスクをもって調整された登記簿に記録されている事項については、その性質上、閲覧や謄本・抄本の作成は困難であるので、閲覧に代わる制度として「登記事項要約書」が、謄本・抄本・証明書に代わる制度として「登記事項証明書」が設けられ、何人も手数料を納付して、これらの書面
の交付の請求ができることとしました。
不動産登記簿の登記事項証明書の種類としては「全部事項証明書」「現在事項証明書」「区分建物全部事項証明書」「区分建物現在事項証明書」「何区何番事項証明書」「所有者証明書」の6種類が、また、登記事項要約書は、[1]不動産の表示に関する事項(現に効力を有しない事項を含む)[2]所有権の登記のうち所有者の氏名、住所、持分、申請書受付年月日及び受付番号、[3]所有権以外の登記で現に効力を有するものの主要事項、を記載して作成されますが、認証文はもちろんのこと、作成年月日の記載もされません。
商業登記簿の登記事項証明書の種類として「現在事項証明書」「履歴事項証明書」「閉鎖事項証明書」「代表者事項証明書」の4種類があり、また、登記事項要約書は、商号区、会社状態区及び請求にかかる区に記載されている事項中現に効力を有する登記事項を記載して作成されますが、役員区については取締役、代表取締役および監査役の就任の年月日も記載されますが、認証文、作成年月日は不動産同様記載されません。
6 インターネットによる登記情報提供サービス
電気通信回線による登記情報の提供に関する法律が平成11年12月14日成立し、平成12年4月1日から施行され、インターネットにより自宅や会社、事務所から登記情報を確認することができるようになりました。提供される登記情報は、不動産登記、商業・法人登記および中小企業等投資事業有限責任組合契約の登記で、コンピュータ化された登記簿に記録された情報の全部または一部の情報ですが、利用するには、あらかじめ指定法人である財団法人民事法務協会(東京都千代田区外神田3―5−12 TEL03-5297-3751)との間で契約を締結し、利用者登録を行う必要があります。
7 登記事項の調査
登記事項を調査するときは、登記簿を閲覧したり、登記簿の謄本や登記事項証明書を見ることによりますが、できるだけ調査日に近い日付のものによるべきですし、必要に応じてコンピュータ化により閉鎖された登記簿を閲覧するのが望ましいと思います。
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